大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和59年(行ケ)274号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決取消事由について検討する。

1 取消事由(1)について

(一) 当事者間に争いのない本願発明の特許請求の範囲には、三組の平行板ばね(22、23、24)がほぼ直方体の六面を形成するように配置することを要件とする旨が明文をもつて記載されていないことは当事者間に争いがない。

(二) そこで、本願明細書及び図面の記載から、本願発明は三組の平行ばねがほぼ直方体の六面を形成するように配置することを要件とするものであるか否かについて検討する。

本願明細書及び図面には原告主張(請求原因四の1)の<1>ないし<4>の記載があることは当事者間に争いがない。そこで、右記載について順次検討する。

(1) まず右<1>の記載についてみるに、この記載自体からは(a)二軸方向において場所を節約し得ること及び(b)三軸方向においても場所を節約し得ることが共に本願発明の目的であることを明らかにしているとみるのが文理上自然な解釈である。そして、右の二軸方向において場所を節約し得るとは、三つの組の平行ばねのうち二組の平行ばねがほぼ直方体の四面を構成し他の一組の平行ばねがこれとは別の位置(空間)に配置された場合であり、三軸方向において場所を節約し得るとは三つの組の平行ばねがほぼ直方体の六面を形成するように配置された場合をいうことは明らかである。前掲本願発明の特許請求の範囲によれば本願発明は、三つの組の平行ばねのうち二つの組はほぼ直方体の四面を形成するような位置関係にあることが要件とされているところ、このような構成に対応する本願発明の目的が前記の(a)に相当するものと解される。若し本願発明が原告主張のとおり三組の平行ばねがほぼ直方体の六面を形成することを要件とするものであるとすれば、<1>の記載における「二軸方向においても」の記載は無意味な記載と解するほかはないが、他に特段の事情がない限りこのような解釈をすべきでないことは明らかである。

従つて<1>の記載をもつて本願発明を原告が主張するような構成のものであるとする根拠とはなし得ない。なお、このことは次の(2)において、本願明細書の記載(七頁五行~七行)とこれに関して述べるところと併せ考えれば一層明瞭である。

(2) 次に<2>の記載についてみるに、この記載中の「これらのばねのいずれか二組の間の場所」とは、その文言のとおり三組の平行ばねのうちいずれか二組が占める場所であるが、これには(a)その二組のばねが別々に配置されて同一の場所を占めない場合と、(b)その二組のばねがほぼ直方体の四面を形成するように配置されほぼ同一の場所を占める場合とが当然に想定されるところである。そして<2>の記載によれば、この場所が「少なくとも一つの他の組の間にも分け与えられる」というのであるから、残りの第三の組のばねとの関係で右(a)の場合はほぼ直方体の四面を形成し、右(b)の場合はその六面を形成することとなり、右(a)の場合も二軸方向において「コンパクトに(場所をとらないように)配置」できるものであることは明らかである。従つて<2>の記載において右(a)の場合を除外すべき理由は見出せない。

そうすると<2>の記載によつても本願発明を原告主張のような構成のものであるとすることはできない。このことは次の点を併せ考えれば一層明瞭である。

すなわち、成立に争いのない甲第二号証の一、二によると、本願明細書には<2>の記載の後に、「……ばねの配置の高さを若干犠牲にして、ばね24間の空間がばね23の上端の上方にあるように、ばね24を置くことも出来る。」(七頁五行~七行)との記載が認められるが、これはばね23とばね24の二組が直方体の四面を形成しないでZ軸方向に上下に配置されていることを示すものであり、前記(a)の場合に相当するものである。

(3) <3>及び<4>の記載は三組の板ばねがほぼ直方体の六面を形成するように配置されていることに関するものであるが、前掲甲第二号証の一、二によれば、右記載は本願発明の一つの実施例についての説明部分であることが認められる。従つて右記載から本願発明が原告の主張するような構成のものであるとすることはできない。

(4) 以上のとおりであつて、<1>ないし<4>の記載から、本願発明は三組の平行ばねがほぼ直方体の六面を形成するように配置したものに限定されるということはできず、本願明細書、図面を検討しても他にこのように限定すべき記載は見当らない。

(三) よつて、原告主張の取消事由(1)は採用できない。

2 取消事由(2)について

(一) 本願発明は、三組の平行ばねがほぼ直方体の六面を形成するように配置された構成に限定されず、二組の平行ばねがほぼ直方体の四面を形成するが他の一組の平行ばねはこれと別の位置に配置された構成を包含するものであることは、1に述べたとおりである。

一方、引用例には審決が認定したとおりの記載があることは当事者間に争いがなく、右事実及び成立に争いのない甲第三号証によると、引用例には三組のいずれも平行に配置された板ばねのうち第二の組(板ばね4、5の組)と第三の組(板ばね6、7の組)とはほぼ直方体の四面を形成するが第一の組(板ばね2、3の組)はこれと別の位置に配置されたものが記載されていることが認められる。

そうすると、本願発明と引用発明との間には原告が主張する構成上の差異はない。

(二) 原告主張の本願発明と引用発明との作用効果の差異に関する主張は、両発明に右構成上の差異があることを前提とするものであるが、このような構成上の差異がないことは叙上のとおりである。従つて両発明の間に原告が主張する作用効果上の差異もないというべきである。

(三) よつて原告主張の取消事由(2)の主張も採用できない。

3 以上のとおりであつて、原告主張の審決取消事由はいずれも理由がなく、審決には違法の点はない。

三 よつて、原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註その一〕 本願発明の特許請求の範囲は左のとおりである。

測定針棒および保持体を有し、上記測定針棒が上記保持体に対して動き得るように上記保持体に連結された測定装置において、固定端および自由端を有する平行板ばね(23)の第一組、および固定端と自由端とを有しており、上記第一組のばねの長さ方向、すなわちZ軸に直角なX軸およびY軸を含む面中において延びる平行板ばね(24)の第二組を有し、上記第一組の固定端(23B)、および上記第二組の自由端(24A)には剛性中間体(25)が取付けられ、上記第一組の自由端(23A)、および上記第二組の固定端(24B)にはそれぞれ端体(20、16A)が取付けられ、上記端体のうちいずれか一方が測定針棒(15)に、同他方が保持体(16)に連結され、上記二つの組(23、24)の一つ(23)と、これに近い端体の一つ(20)との間には第三の組の平行板ばね(22)が連結され、この第三組のばね(22)は、Y軸およびZ軸を含む面辺において、上記最初に述べた二つの組の上記一つの長さ方向、すなわちZ軸方向に延び、上記第三組のばね(22)と上記最初に述べた二組の上記一つ(23)の相近い端(22B、23A)間にはさらに剛性中間体(21)が取付けられることを特徴とする測定装置。

(別表(一)図面参照)

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙(一)

<省略>

<省略>

別紙(二)

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!